いま蔓延するブラキシズムに気付けますか?

Main 20190419
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歯科医院を受診する人のほとんどは、虫歯や歯周病などの他に、定期検診をはじめ口内炎や義歯の不調などを理由に来院されます。最近では、堀ちえみさんの報道によって、舌癌に不安をもち来院する人も増えました。
こういった患者さんに問診をして最初に口の中の確認をするのは、歯科衛生士です。
ところで、検診をしているとき、あなたの目は何をみているでしょうか。歯のどんなところを見ているのか、歯肉や舌、粘膜などの何を見ているか、考えたことがありますか?
実は、口の中は、虫歯や歯周病、口内炎や舌癌などの異常以外にもいろいろなことを教えてくれるのです。

実は、近年ブラキシズムをしている人が非常に多いといわれています。
そもそもブラキシズムとは
「過度の覚醒活動に関連する睡眠中の歯のグラインディングまたはクレンチングを特徴とする口腔異常機能」
と定義され、主に就寝中にしている歯ぎしりや噛みしめのことを指しています。ただ、ブラキシズムは、眠っている時だけでなく日中でも無意識にしている人が多く、さまざまな不調を起こすこともわかっています。

ここでは、ワンランク上の歯科衛生士になるために、ブラキシズムに気付くためのポイントを紹介します。

「やってない」はずが「やっている」人が大多数


まず、患者さんの問診をとるときに
「歯ぎしりや噛みしめる癖はありませんか?」
と聞いてみてください。そうしたら大半の患者さんは
「そういう癖はありません」
「私はやっていません」
と返事が返ってきます。中には、半笑いで「いや~、私はそういうのはないですよー」という人もいます。
ところが、ある調査によると、日本人の8割以上が大なり小なりやっているというデータがあるそうです。ということは、ブラキシズムの強さや程度は異なるものの、ほとんどの人が少なからずやっているということになりますね。そして、それにもかかわらず、認識していない人が多数いるということがわかります。
どうやら歯ぎしりというと、「恥ずかしい」「みっともない」といったイメージを持つ人も多いようです。漫画やイラストで、腹が立ったりイライラした時に「きー!」歯を食いしばっている人を見たことがあるでしょう。

『歯ぎしりをしている人はかなりストレスがたまっている』
という認識が定着しているのも理由としてあるのかもしれませんね。ただ、ブラキシズムは無意識にやっている行動なので本人が気付くことはほとんどなく、「まさか自分はやってるはずない」と思っている人も多いのでしょう。

ブラキシズムしてる?その見分け方


ブラキシズムをしている人の口腔内には、特徴的な兆候や症状が見られます。患者さんの問診からもブラキシズムを疑う症例は数多くありますので、その特徴をしっかり覚えておくとさらに検診の幅が広がります。


【ブラキシズムの見分け方】

歯に見られる兆候や症状

て奥歯の咬頭や前歯の切端、犬歯の切端がすり減っ平らになっている。噛み方によって上下の歯の切端がぴったり合う位置がある。
歯の表面にヒビが入っている
歯が欠ける、折れる
楔状欠損(歯頚部が欠ける)がある
銀歯(特に臼歯部)のマージン(境目)にずれや隙間がみられる

粘膜に見られる兆候や症状


頬の粘膜に咬頬線と呼ばれる白い線がある
舌の縁にぎざぎざとした痕がついている
歯肉が退縮している
舌に痛みがある
口内炎ができやすい

それ以外に見られる兆候や症状


歯の周りにある顎の骨に膨らみやでっぱりができている
顎の関節が痛い、音がする、口が開けにくい
エラが張ってきた

患者さんからの主訴からわかる兆候

銀歯や詰め物がよく外れる
冷たいものがしみる
噛むと痛みがある
口が開けにくい
朝起きた時、顎や口の周りの筋肉が重い、だるい
頭痛や肩こりがよく起こる

ブラキシズムによって起こること


意外に知られていませんが、リラックスしている時の口の中では上下の歯は噛んでいません。安静空隙(安静位空隙)といい、ほんのわずかですが隙間が空いているのが正しい状態です。通常リラックスしている時は、『唇を閉じて上下の歯はわずかに離し、舌が上の前歯の裏についていて鼻呼吸しているのが最もいい状態』とされています。さらに、上下の歯は、24時間の中で食べている時間を含めてもトータルで20分程度しか当たっていないとされています。でも、ブラキシズムのある人は、それ以上に歯が当たっている上にリラックスした状態より過剰に力を加えているため、歯や歯を支えている組織や周囲の粘膜、顎関節や顔の筋肉にまで負担をかけているのです。
こういった常態的な負担が原因で、口の中やその周囲の組織に対してさまざまな障害が起こるのです。

ブラキシズムに対処する方法


最も現実的な対処法としては、就寝時に『ナイトガード』というマウスピースを装着する方法があります。ナイトガードは、歯型を採り上の歯の咬み合わせの形に合わせて作ります。ここで、咬み合わせの部分は、下の歯が全方向にスムーズに動くようにします。ナイトガードは保険適用なので5~6000円程度で作ることができます。ただし、違和感もあり馴染めずに使うのをやめてしまう人もいるのが難点です。
その他、日中のブラキシズムには、『張り紙』も効果的です。目につき至る所に『歯を当てない』『噛みしめない』などの言葉を書いた付箋やメモを張っておき、注意を喚起する方法です。
また、最近では、ブラキシズムによる知覚過敏に対して、栄養素のひとつである『ナイアシン(ビタミンB3)』に効果が期待できるという報告もあります。就寝中のナイアシン不足が原因ではないかとの研究から試験的に使用した結果、90%以上に効果が見られたとの調査結果が出ています。また、中にはブラキシズムそのものが軽減したとの報告もあるようです。飲み方としては、通常のサプリとしてではなく、例えば1ヶ月分を10日間で集中的に摂るといった方法です。ただし、その作用については、具体的なことはいまだ解明されていません。ビタミンの補充によるものですので、ブラキシズムによる知覚過敏が気になっている人は試してみるのもいいでしょう。

まとめ

ブラキシズムは、今各地の大学付属歯科病院などをはじめとして、専門外来もあるほど注目されている習癖です。それだけさまざまな影響を及ぼすことがわかってきたからでしょう。そして、ブラキシズムに気付く第一歩は、歯科衛生士の『見る目』にあります。
歯や歯肉をはじめ、骨や顔の変化、患者さんの悩みや症状など、どんな小さなことでも聞き逃さず、そして見逃すことなくチェックしておくと、患者さんの性格や生活習慣など背景にある様々なことが見えてきます。ブラキシズムを見抜くことで、これまで虫歯や歯周病が原因と思われていた症状が、積極的に歯を削ったり麻酔をしたりしなくてももしかすると改善するかもしれません。
患者さん自身が気づいていなかったブラキシズムを具体的に指摘して納得してもらえたら、患者さんへの啓もうもうまくいきますし、信頼を得ることもできるでしょう。
ブラキシズムは今後さらに拡大することは間違いありません。歯科衛生士として、子どもから大人までしっかり見極めのできるプロの眼を是非養ってほしいと考えています。

 

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